
2025年度の展望
2025年問題と2025年の壁
2025年度を語るのに「2025年問題」は外せません。我々介護に携わる者の問題として考えておく必要があります。既に社会問題として捉えられているのでご存知と存じますが、改めてこの問題に触れてみようと思います。
戦後の第一次ベビーブームと叫ばれた所謂「団塊の世代」は、1947年から1949年に生まれた世代を指し、戦後のその時代に最も多くのベビーが生まれたことが「2025年問題」の要因になっているといえます。すなわち2025年にその世代の人たちが後期高齢者の仲間入りを果たし、その割合がピークに達するからです。それに輪をかけ「少子化」が社会問題化され、人口構造の逆ピラッミッド化が顕著になっています。このことが社会保障全体の課題にもなり、さらに問題を大きくし複雑にしているともいえます。高齢者は増え続け、その人たちを支える生産者世代が少なくなっていくので、まさに「少子高齢化」は大きな問題として、以下のようなことが叫ばれています。2025年問題が社会や日本経済に与える影響は年金や医療保険、介護保険、生活保護などの社会保障制度を維持するために国が支出する「社会保障費の負担増大」、医療や介護サービスの需要が高くなることで充分な人材の確保が追いつかなくなる「医療・介護体制維持の困難化」、多くの企業が人手不足に陥るなかで売り手市場化が進行していくことで生じる「労働力の不足」の3つが挙げられます。既に介護体制の維持や労働力不足は深刻化していて、わが法人も悩まされ続けている課題の一つになっています。また円安や物価高による影響は計り知れず、多くの介護事業所を閉鎖にも追いやられています。それは運営経費や人件費が、運営費交付金の介護報酬や措置費などの上昇分が追い付いていなくて、経営圧迫を余儀なくされているのが現状だといえるからです。一日も早くこの状態から脱却する方向が見えてくることを期待したいと思います。
更にもう一点、「2025年の壁」問題があります。経済産業省が発表している「DXレポート~ITシステム「2025年の壁」克服とDXの本格的な展開~」を引用して、その問題に触れてみたいと思います。
そこには6点の課題が述べられており以下のようなものでした。
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既存システムのレガシーシステム化:システムの老朽化、複雑化、肥大化等で、高コスト構造を形成している
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新しい技術の対応できない:新しい技術の追い付けない現状が存在し、デジタル競争に負けるかもしれない現状。
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IT人材不足・システム維持管理費の高騰:システムの刷新を担う人材がいない現状、それによってシステム開発に高コスト(保守料。運用費)の技術的負債が蓄積される。
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サイバーセキュリティ等のリスクの高まり:職員の高齢化、退職等の人材不足が加速し、システムトラブルなどのリスクの高まりが生じる。
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各種システムのサポート終了:既存のシステムサポート期間が終了。
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IT市場の急速な変化:デジタル市場は市場機能が高度にデジタル化し、ヒト・もの・情報・カネの流れが動的に組み合わさった様々なサービス・活動が実現する市場とされている。その多くは、クラウド・5G・アイシャル開発などに投資しているのが現状。
またこのような多くの課題を阻害する要因や、その解決策も提示されています。文面の都合上詳細は割愛しますが、その中でテーマごとの解決策を表題のみ列記すると、
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DX推進システムガイドラインの制定
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情報の「見える化」・分析スキームの構築
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ITシステムの刷新
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デジタル技術の新たな技術への対応
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ユーザー企業・ベンダー企業間の新たな関係構築
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DX推進をサポートするパートナーの発掘
が挙げられています。
ともあれ、これらの解決策を推進するにも、ITシステムの刷新やDX人材の確保を初めとしたDX推進が不可欠です。そのことを熟考し今後の企業が生き残る戦略の一つとして考えておく必要があると思われます。IT化が進む中、我々もそのことに注目し、今後のデジタル社会に対応していくとともに、超高齢社会と叫ばれる時代の中にいる社会福祉法人として、更なる経営基盤を構築し、地域の福祉の拠点となるよう努めて努めてまいります。2025年度もどうぞよろしくお願いいたします。
(文責:2025年6月30日まで有効)
2025年4月1日
社会福祉法人千鳥会
理事長 吉村 秀樹
